空想少年通信

素人物書きのつれづれブログ。

2010-09-26から1日間の記事一覧

期限

死神が迎えに来てから一週間、明日が期限だという。覚悟は決めたからいいがあんたと話してて俺、危ないヤツだと思われないかねというと、もともと危ないから大丈夫と返された。普段から独り言が多いとこういうとき怪しまれなくていいよね、ってそれはそれで…

日焼けのあと

今年も今日でプールは終わりだと言われた。もう君の水着姿でドキドキしなくてすむんだなぁ。「おい、見ろよ。こんなに焼けちまったよ」腰の辺りをめくって見せてきたのでお茶を噴きそうになった。やめろっ。俺を殺す気かっ。

ビー・エル

寒いと思ったらリモコン片手に立つ君が。「エアコンの温度下げんな」毛布にくるまったら「鍵もかけずにパンツ1枚で寝てるヤツが悪い。襲えと言ってるようなもんだろ」といって乗っかってきた。今、かなり誤解されやすい状態だから、と思っていると猛烈にじゃ…

横恋慕

朝から洗面所を占領している弟。どーゆーこと? とぶーたれていると「デートだって」と母さん。えー、なにそれじゃ彼女出来たの? 浮かれるあたしに「違う、友達のデートのつきそい」と浮かない顔の弟。俺のほうが絶対いいってわからせてやるとか言って出かけ…

家族ゲーム

「あんたはデパートの屋上で拾ってきた」と母によく言われた。母は僕が泣いて否定するのを期待していたようだが、僕は「それならそれで仕方ないな」と思って「ふーん」で済ませていた。母は驚いていたようだが僕は夜な夜な布団の中で本当の家族が迎えに来る…

リトル・デイト

デートの度に小さな弟を連れてくるから本当は二人で会いたいんだけど、とさりげなく伝えてみた。弟くんは涙目で「僕一人でお留守番できる」というし彼は「夜間保育所探すよ」という。なんかあたし一人で悪者みたいじゃないか! そりゃ彼がふたり暮らしなのは…

家出

家出してきた友達は結局俺の布団で寝てしまった。連絡しようかどうしようか迷ったけどそれもしてない。汗をかいた顔をタオルでぬぐうと「好き」と寝言を言った。好きならその人を困らせるんじゃないよ。俺の気持ちなんかちっともわかってないじゃないか。

ライトノベル

パンくわえて遅刻遅刻とかマジありえないし、と思っていると通りの向こうで本当にぶつかって、教室ではそれで半分ケンカになっている男子女子。「これ、返す」ハンカチ差し出し顔真っ赤の男子。困ってたから貸したのにそれで好きになられても。少なくとも僕…

写真撮影

卒業アルバムの写真を撮っているときに、君のことを見ながら「もう会うこともないんだろうな」と思った。「同窓会かったるい」「ま、どうせ誰も呼ばないだろうけど」それが本当だとしても君の口からその言葉は聞きたくなかった。これがあいつからなら納得し…

別れの曲

お前わがまますぎ、といいながら弾く彼のピアノが僕は好きだ。こういうのと言うとさらさらと音が流れていった。「今日弾いたのはなんて曲?」「別れの曲」じゃあ、もうこれで最後にする。引っ越すから、と言うと君は少し驚いていた。「やっぱりお前わがまま…

nobody knows

生まれ育った場所を離れ、両親もいなくなってしまった今、そこに戻る理由なんかない。どうにか生きているこの町で君に出会い、君を守って生きていくことにした。思い出なんか今から作ればいい。僕を知る人はもうここにしかいないのだから。

喫茶店

学校が終わると制服のまま街まで行って裏道にある喫茶店に入るのが好きだった。たいてい一人だったので参考書だの文庫本だのを見ながら少しの時間を過ごした。あるとき試験後に久しぶりにそこに行った。「試験、どうだった」「まぁまぁかな」それがマスター…

さよなら

君と別れた日、一人になった瞬間にケータイのメールを全て消した。どうでもよくなったのだ。次の日、君に会ったが(仕事で)なんの感情も持たずにこなした。薄情だと言われたがもう君とは関係ないのだよ。

引き際

いつも輪の中に入れずに眺めているだけだった。いい年になった今もあまり変わらない。入ったところで場をひっかきまわすだけだとわかっているからだ。今日もイベントの準備を手伝いつつ、引き際を探っている。

アニバーサリー

科学実験で喜ぶ君を見て、本当にここでよかったのかと思った。どこへ行きたいか聞いて即答だったからいいのだけど、友達は芸がないと言うし。もうすぐプラネタリウムの上映だよと手を引かれた。だって記念日だし。ああ、そうか。君とここで出会って今日でち…