空想少年通信

素人物書きのつれづれブログ。

(無題)

声をかけようとして見えた先に君と知らない男のつながった手があった。
思わず出た声に君が気づき慌てたように離れる。その意味がまだ把握できなくて固まったままの僕に向かって君がなにか言っているのだけはわかる。ただその言葉の意味がわからない。
僕の知らない男は目を合わせようともしない。なにか気まずいことがあるのだろう。のんきなものの言い方だということはわかる。いまの僕にわかるのはそれだけだったのだ。
「すきな人ができたんだね」
ようやくのことで僕はそれだけを言う。すきなひとが、できたんだね。
どうせなら開き直るか逆ギレか、なんでもいいのだけれど、できれば自分を正当化するような言動とか行動とかなにかがあればよかったのかも知れない。そうすれば僕だって君に対して怒ったり僕の知らない男に対してつかみかかったり(みっともないからしないけど)、もしかしたら何事もなかったかのように無視して通り過ぎることもできたのかもしれない。