空想少年通信

素人物書きのつれづれブログ。

「突撃!!放課後オールスター」寄稿したお話、ちょっとだけお見せします。

大阪文学フリマまで二週間を切りました。ここで、男一匹元気が出るディスコシーズン2「突撃!! 放課後オールスター」に寄稿した、珍しく小説のようなカタチになった(笑)「あえて、風紀委員」の冒頭を掲載します。添嶋さんの小説が読めるのは男一匹元気が出るディスコだけ!
詳しい参加者は主催者クロフネ3世さんのブログで。表紙は鈴根らいさんです。

『あえて、風紀委員』


整然としている机。着席したまま微動だにしないロボット。
ここが本当の学校なら、生徒はもう少し落ち着きなく行動していてもいいはずだ。
もうちょっと個々の動きにばらつきがあってもいいかな。状況判定の幅を広く取ったほうがいいのかもしれない。
細かいことは先生に相談してから決めるか。どっちにしても一人でプログラム見直すのもめんどくさいし。
ここは昔、小学校だった古い木造の校舎だ。
近年過疎化が進んで、ここも廃校になってしまった。もう十年くらいじゃきかないだろう。廃校どころか村そのものが消滅する危機にさらされて一計を案じた村長がここに会社を誘致した。
そして僕たちの会社がここに来ることになった。
僕たちはフレンドロイドを作っている。わかりやすく説明すると「友達遊びのできるロボット」のことだ。といっても、漫画に出てくるようなネコの型をしているわけでもコロッケが好きなサムライ型でもない。普通のヒトのかたちをしたロボットだ。ここで組み立てて、「勉強」と称してプログラムを導入して、僕たちが「授業」と呼んでいるパラメータ調節を行って、「定期試験」で製品的にも性格的にも問題ないと判断されたら、ここを「卒業」して出荷される。
社長は悪ノリとも言える発想で、どうせ古い学校を改装した工場ならどこまでも学校ぽくしてしまえとばかりに肩書きや部署まで学校と同じようにしてしまった。
社長は自らを「校長」と呼び、ちゃんと教頭もいる。事務所は「職員室」という名前だし、「教室」で授業をして「体育館」では運動性能の試験を行ったりする。もちろん「学食」もある。当然そこで働くのは「給食のおばちゃん」だ。
ここで働く人間はみな、ここの雰囲気に合わせてなんとなく教師のような格好でいることが多い。だから社員はほとんどが「先生」と呼ばれていた。ただ、僕は学生アルバイトなのと、インシデント管理と呼ばれる事故を把握して必要な部署へ連絡し対策をしてもらうための記録をする仕事を補助していたので、「風紀委員長」というなんだか偉いんだか偉くないんだかよくわからない呼ばれかたをしていた。
とはいえ、こんな山奥の田舎の、木造校舎だったものがフレンドロイドの工場だと知ったらたいていの人は驚く。
製造過程が「生まれてから社会に出るまで」をなぞっているように見えるから、兄弟のいない子どもや、子どもがいない大人たちには受けているようだ。定期的に授業参観と称して製造過程を見せているため、村にも近隣からの見学者が増え、ほんの少しではあるけれど活気を取り戻しつつあった。
もっとも、なにも知らない人が聞いたら悪ふざけが過ぎるとでも思うんじゃないだろうか、とは思うけど。



普段の僕はタイチ先生と授業の担当をしている。二人で常時三十体くらいのフレンドロイドを見ている。
基本プログラムには余計な要素は一切入っていないので、ヒトの動きに近づけるために色々な情報を加えていく。細かい動作を行うためにいくつものサブプログラムを入れ、動作に必要なパラメータを調節してそれぞれ個性がでるようにしていくのだ。
始業時間。学生が登校して教室の自分の席につくように、フレンドロイドが指定された場所についている。
まだ完全な調整を終えていないから、動きもヒトのものとは違ってどこか四角四面な感じだ。
そういえば一体足りないな。
もう卒業させたんだっけか、と思いコンソール画面で確認をする。どうやらその記録はないようだ。そもそも今度の文化祭に出すやつじゃないか。もうそんなに日がないっていうのに大丈夫なんだろうか。

続きは4/14第十六回文学フリマin大阪、4/28超文学フリマ、他のイベントで!