空想少年通信

素人物書きのつれづれブログ。

小規模出版社のしごと(の話を聞く)

日曜日(3/4)に小規模出版社の方からお話を聞く機会を得た。水曜文庫という古本屋さんで「本を作ること」という講座があって、その中の小規模出版社の仕事という会だったのだけど、たまたま日程があったので思い切って行って来たのだった。

話者は堀之内出版の小林さん。(ほぼ)ひとり出版社状態だそうで、最初に入った理系の出版社からいくつかを経て現在。

 

静マルでも同じようなイベントをやりたいと思っていたのだが、それって静マルでやることなのか、という話もあり(そりゃそうだ)、単に自分が聞きたいだけならこういうのに出ていけばいいだけだし、というわりと単純な結論に至ったわけで。

静マル参加者の人はどういう話を聞きたいのか(聞きたくないのか)、単に酒が飲みたいだけなのかどうなのか、という根本的なところから考えないといけないのだけど。今はちょっと置いておくことにした。

 

で、ここからは簡単なまとめ。趣旨が違うかも知らんが、それは僕の理解力のなさからくるものだ。

 

いろいろな人と繋がりを作るにはアンテナを高く出しておく必要があって、それは例えばツイッターのRTでもなんでも気に留めておくとかそんな感じ。何かのときに思い出してアポを取ることがあるかもしれない。

専門性と分かりやすさのバランスを取るのが編集。渾身の一冊を作りたい、っていうなら別に商業でなくてもよくて、なんなら同人誌でもいい。

小規模出版社をやるハードルは実は下がってきてるのではないか。全くの新人でも、ある程度部数を見込めるなら(費用の回収を見込めるなら)出しやすいかもしれない。数字を稼ぐために出す、ということはないが、数字を確保しつつコンスタントに出していくことが肝要。ただやるだけなら瞬発力があればよくて、継続するには(コンスタントに出版していくには)それなりにノウハウがいる。

あと、編集も営業も一人でやることが多いから、書店営業のときもアピールしやすい。

取次を通してないから装丁も凝ったことができるし。かっこよさ優先で作れる。

 

(最近は若者が読んでないというが)

それはあまり心配してなくて、売れてないのは単に人口が減ってきてるから。ウエブ媒体で読むから買わない人もいるが、それが大きな要因とも言えない。学生なんかは、必要になったら読むようになると思っている。

週刊誌の電車広告がなくなったのもターゲットユーザーが定年を迎えて電車通勤しなくなったから意味がなくなったため。

 

取次経由だと口座を作る必要がある(高額な保証金/大手出版社の偉いさんとかの保証人が必要だった)。パターン配本(ていうのがあってこの規模のこういう売れ方をする書店はこれくらい配本したらいいよね、って自動的になされる初回出荷のこと)はミスマッチを起こしやすくて、結果返品が増える。

堀之内出版は直接取引。なので、書店のいう数が大体売れる数で、ミスマッチも起こりにくい。ゴリ押しもしない。

 

アマゾンは(実は嫌いだそうだが)、ここが一強になってしまうと、価格の決定権が版元にはなくなってしまう恐れがある。また、リアル書店との競合、古書店のと競合も。そういうこともあって、リアル書店、自社のウエブ通販、アマゾン以外の通販サイトへの誘導をしている。

リアル書店で本を買う、という行為がなくなると本を手に取る機会がなくなるのではないかと危惧している。

 

とまあ、こんな感じ。

同じ組版ソフト使ってても、上手い下手はあるとか、表紙は大事とか。締め切りがないといつまでたっても出来上がらないから、締め切りは必要とか、そういう手の話をもうちょっと聞きたかったけど、そういうのを必要としてる人は少なかったのかなー。自説を語りたい人がちらほら。

 

とはいえ、とても有意義な時間だったと思う。

自分が何になりたかったのか、どうしたかったのか、ということを改めて考えるいい機会だったのかも。

昔、就職活動のころ、某大手の説明会に行ったことがあるのだけど、バリバリの右とか左とかの人が戦いを挑むような質問をしているのを聞いて「あ、自分みたいなのほほんといい本作りたいなー、みたいなのが来たらダメな業界だ」みたいな結論に至ったことがある。合わないこと向いてないことを確かめに行ったのだから当然なんだけど、まあだから記念受験みたいなもんですな。

そんな話を後輩にしたら「あれ、添嶋さんは編集とかじゃなくて書く側になりたいんだとばかり思ってました」とか言われ、そりゃそうだけど、という言葉を飲み込んだことを思い出した。20年経って同人誌作ってんだから世話ないけど。

ま、なので、わりと単純に昔から言ってるように、過去の自分との落とし前をつけようとしてるみたいな、そんな感じなのかもしれぬ。

で、あれこれやってやっと自分が何になりたかったのか、どうしたかったのかというところに戻ることができるのであった。長えよ。

 

閉会後、小林さんに図々しくも話しかけ、アンソロ献本しますよ、などと伝えたのだけど、その時に渡した名刺からサイトを見てくださったようだ。

あんな駄文……と思われてもしかたないようなできのもの……を読んでいただいたのかと小さくなるしかなかったのだった。正直なところ、あまりの出来にコメントにも困ったと思う。(だからアンソロ送るんだけど。他のひとのも読んでください、って)

 

というわけで、皆さんも機会があれば聞いてみるといいよ。