空想少年通信

素人物書きのつれづれブログ。

感想をいくつか(その5)

一時期ちょっとだけ長い文章が読めなくなってきて、こらヤバい、と思っていたらまたちょっと読めるようになってきたので慌てて読みにかかっている添嶋です、こんにちは。

また日があいてしまいましたが、添嶋のアフター文フリはまだまだ続きます。

  • DAISY CHAIN vol.11
    小説2篇とマンガ2篇収録。
    「レミングの日」うっすらとつながりは見えるのだけれど、一見ばらばらのカードがいくつか提示されて、それが最後に向かって一つにつながって見えたときの安堵感。
    ありかという少女のことは大嫌いだ。そういうふうに小説の登場人物を「嫌い」と思わせる力の強さ。他方、市村くんはカッコよすぎるかなぁって思った。ただ、どちらも物語を成立させるには必要なキャラクターなので、これくらいのほうがわかりやすくていいのかもしれないと思った。
    8月31日がその日というのは「夏休みの終わり」ということから連想しても「幼年期の終わり」なのかなーと思った。ものすごい飛躍だけれど。子どもの時間を終えるという悲観から死に急ぐのかと。実年齢は関係なく。読み込みが足りないかなぁ。
    「ボクの名前」正直なところ、変なことにこだわるなぁ、苦悩してるなぁって思う。些細なことでからかわれることも、名前がおかしいかもって悩むことも実は子どもっぽいことなんじゃないかなって思った。
    田丸はきっとそういうことを遠回りして克服……というか、脱皮して大人になったんじゃないだろうか。彼に対する、彼女の導きかたはすばらしいと思います。もしかしてこの本のテーマは「大人になる」ということなのだろうか。
    「Let It Snow Let It Snow Let It Snow」「トラベル」の2本のマンガは、絵柄も性格も正反対。前者はかっちり、後者はゆるーく。宝島とかQuick Japanとかそんな感じの雑誌に載ってそうなマンガだと思った。あるいは文芸誌に載ってるような。僕にとってはこのマンガは正統派文芸誌マンガだと思う(笑)。小説2本がわりと緊張感漂う感じなのでバランスをとるにはちょうどいい塩梅だと思った。
  • 「機械仕掛けのイコン」兎角毒苺團
    サークル名は「とかくどくいちごだん」と読むそうです。アンソロジー。トーンが統一されている。でも、その中でもちゃんと起伏に飛んでいるので最後までだれたり飽きたりしない(これ重要)。これは編者の方の力だと思いました。量が少なくても途中で飽きる本とかいくらでもあるし。
    短編集なので、余計な枝葉を広げないでさくさく話が進むので読んでいて気分がいいです。あからさまにハッピーな話はないけれども。ただ、余計な枝葉がないぶん、もちょっと読みたいなぁって思う話もありました。次を待てばいいのか。
    この中からどれか特に好きな話を選べといわれたら「介護ロボット」「巨人の帰還」の2編です。
    Twitterでは書かなかったんですけど「擬典使徒影絵舞曲」だけは声に出して読みました。文章のリズムのせいかなぁ。
  • 「迷宮図書」佐藤
    文フリでは珍しい(と思う)新書サイズ。裏表紙に結末を先に読むなとあったので、自分には珍しくその通りにして頭からちゃんと読んだ(普段は結末だけ見て安心して最初から読み進めるということをわりとやるので。いろいろ臆病なんです)。
    で、これはメタ小説って言っていいのかな。普通の一人称と、自分を俯瞰で見て一人称で実況するところがあるので、なんとなく読んでいるとちょっとだけ混乱するのはそういうことだと思います。俺だけもしれないけど。
    パラドックスとかジレンマという言葉やその意味とか具体例とかを知っていたほうが楽しめると思います。暇にまかせてウィキペディアを見ててよかった。実際に出てくる言葉の内容を知らないとおもしろくないです、たぶん。
    最後のオチのところで、思いっきり裏手でツッコミを入れそうになった(笑)。だまされたとかそんなんじゃなくて、「それやってよかったんかい!」みたいな勝手に禁じ手だと思ってたことに対する「誰もダメとはいってないよ」的な感じで。素直におもしろかった、っていう感想が出た本でした。