一日目
週末の東京は朝から暑くて、少し寝坊をしたせいで在来線だけで上京するのを諦めた自分は、新幹線から降りた瞬間から暑さでヘロヘロになっていた。
夕方まで特に何も予定を立てていなかったので、ひとまず浅草橋まで移動。今昔着物大市を流す。普段は意識しないが、こと着物に関しては身丈と裄丈、身幅で探すと絶妙にサイズがない*1、ということになるので*2、よほどのことがない限りは古着は手を出しづらいな、と思うようになっていた。
とは言え、これいいなと思っていた綿のをまた見かけたり、これ、と思うものもなくはなかった。が、よくあるサイズだと比較的安いが、そうでない、許容範囲のサイズだと1.2〜2倍ほどの値段になる。予算に合わないので今回も見るだけになってしまった。そもそも先週、今年の一枚を仕立てに出したところなのであった。
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夕方、神楽坂で「ちょっとしたパーティー」。初めてだよ、ちょっとしたパーティー。ほぼ初めてお会いする方ばかりで人見知り発動しまくりだったが、普段接点のない方と話をするのは楽しい。
和洋ミックス(カジュアルから貴族風味まで)、丁髷(月代もありの本格スタイル)、正統派、なんでもあり。自分は綿麻を着て行ったのだが、なんか文豪っぽいと言われ、ちょっとだけ気を良くする。
「あとは心中するだけですねー」
「玉川上水で(笑)」
「わざわざ静岡から出向いて(笑)」
恥の多い人生を歩いても問題はなさそうではある。そう思うのが自分だけであるなら。
生ハムとワインがとても美味くて、チーズが非常に良いアクセントだった。お店の人、着物の民12人を見てどう思っただろう……。ここはまた他の人とも来たいと思った。珍しく3杯も呑んだ。
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宿に行くには少々早かったので、思い立ち、山椒庵へ。飯濱さんに会いに行った、というのが正確かもしれない。
終い際だったので申し訳ないかなと思いつつ、1時間ほど諸々のお話を伺う。クラウドファンディングで募っていた、コール天の羽織の試作を羽織らせてもらう*3。写真だけで判断していたけど、実物いいな。決めた色にして正解だったし、他の方の選んだ色も確かにその方の色だった。
お暇してから「あ、社割*4」と思ったが、また来ればいいだけのことだし、また来れるだろう。
二日目
日比谷公園を散歩し有楽町まで歩き水分補給をしたあと、国立近代美術館へ。
ゲルハルト・リヒター 展。
アブストラクトペイントやカラーチャート、フォトペイントなどの手法を取る。対象の意味を極限まで削ぎ落とし、抽象化、目に見える情報だけにした作品群……なんだが、それに対して何を読み取るかは鑑賞者なのよね。
ビルケナウとかアブストラクトペイントなんかは写真を元にしているから、なんとなくそこに何かあるように見えるんだけど、気にしなくても抽象画として見ることもできる。
不勉強すぎてなんか書くとボロが出て恥ずかしくなるのだが、直近で見たものではボルタンスキーほどの深刻さはないし、ダミアン・ハーストほどのポップさはない、みたいな*5。
いつもならひととおり見たら満足するのだけど、これは二往復くらいした。アブストラクトペイントシリーズの完成を見たあとのドローイングはアフターアイドリングというか、グライダーの滑降のようでもあった。
もう一回行きたいなあ。
物販で、小さな男の子がポストカードの前で何枚も選び「これは僕の宝物だから」と母親に言っていたのが印象的であった。何を感じたのかはわからないけれど、大切にしてほしい。
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暑すぎて死にそうになりながら、小伝馬町あたりの問屋街のイベント。ふらりと入った呉服店で、米沢の薄物の反物54万がお仕立て込みで14万になるわよ、と言われびっくりする。元値とは*6……と思いつつ、まあこういうタイミングを狙うのが正しいのだろうなという気もした。今年の一枚がまだだったらわかんなかったかもね。買わなかったけど。
サカゼンでワイシャツ買おうかと思ったけど、荷物になるのが嫌でやめた。他にカバンとか、帽子とかエスニックな服とかいろいろ。途中で飲んだレモンスカッシュが美味かった。
対象年齢は自分よりも上の人なのかも、と思いつつ離脱。
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夕方、子どもと落ちあって、子のiPhoneの修理。手際が良くて、あっという間に終わる。よかったねえ。
若干の買い物とご飯。いろいろ頑張っているようだった。いつもいろいろすみません、と言われたので「忘れないで、私はあなたの親です」と返事。泣きそう、とか言われる。ノリはダースベイダーの「I'm your father. 」だったんだけどなあ。
ともかく、必要なものを粛々と用意するくらいしかできないし、頼ってほしい(無理な時は無理だけど)。それだけのことだ。
駅でサラッと解散。それぞれの家に。
あ、二日間の着姿。綿麻の長着*7、ミンサーの帯*8、軽装雪駄。これに帽子と日傘。下は半襦袢*9とステテコ。