ストレンジャーによろしく、という展示が金沢であって、それは見ることができなかった。
その実行委員会が谷根千エリアでやったのが「うららか絵画祭」。どうしたもんかと思っていたのだけど、終わっちゃうし見たかったなってなるのも嫌だったので行ってきた。1日で。
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西日暮里で降りて、最初に見たのがこれ。
作者の(元)自宅が会場*1。ダンボールが積み上がっていたりゴミが散乱してたり…………という体のインスタレーション。まあこれはこういうとこじゃなきゃできないわな……リアルな生活の跡もあったりして面白い。ポートフォリオというか漫画とかイラストとかインスタレーションのエスキースも見られて、悪くない。
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出るときに係の方に「谷中を楽しんでください」と送られる。なんかすごくいい1日になりそうな気がした。
ここから近いところはもう少し後でないと見られないので、少し歩く。
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ちゃんとしたカメラ持ってくればよかった。
青空に透明な展示が映える。駐車場に駐車場の要素が飾ってあることの面白さ。
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これはお寺の中に飾ってあった。お墓をすり抜けて見るという体験。気配とか形跡とか、かつてそこにいた誰かを思う、というメタファー……?
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お寺の外壁には右から左に読んだ時と逆に読んだときでは印象の変わるマンガ……的な展示。
バッドエンドとハッピーエンド……とも言えるのだけど、もがくのも若さ……みたいな気持ちで読んでしまうおじさんなのであった。
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ここの会場のはいちばん好きだったかもしれない。カメラで撮った景色には入らなかった部分を仮想で拡張してある。見えているのに見えてなかった部分。あるいは、本当はこう見えたのかもしれない景色。
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で、時間にならないと見られない会場まで戻る。
なんだろう……カフェの一角のインスタレーション。カフェにいる人たちは特に気にするでもなく、ずっとここにあったみたいな顔をして座っている。よく見ると不思議でいっぱいなのに。
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お腹も空いてきたけど、谷中エリアはどこも人がいっぱい。観光商店街はしかたない。根津まで移動した。
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お寺の会場のはともすると感傷的に受け取りがちなんだけど
ここのはうっかりすると不穏な空気に思えてくる。打ち捨てられた命みたいな、横たわる妊婦のような。
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次の会場でお昼。喫茶店だったので、撮ろうと思えば写真撮れたんだけど、他にもお客さんがいたので自粛した。小さな彫刻とか、喫茶店映えする小さめの風景画とか。
喫茶店という場も込みのインスタレーションのような、客の熱い会話も煙草のケムリも全部ひっくるめて展示。食べたランチはドライカレー。親に連れてこられて食べたご飯のような懐かしさ。
コーヒーも美味かった。
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歯科での展示は診察が終わってから。週末の午後だけというのはそういうことらしい。待合室でレジュメを読んでから展示を見る。知っている人の作品しか買わない、というのはある意味理にかなっている。
こういうところで治療受けたらちょっとは落ち着いて受けられるだろうか。実はトイレに飾ってあった作品がいちばん好きだった。水墨画の山のような。
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上野公園の近くまで移動して最後の会場。アパートの一角をリノベしている。
レジュメを見ながら見たほうがいいんだろうけど、繰り返すモチーフにある意味とか考えるのも面白い。
ネコとネズミが追いかけた、とことん。
リゾート、理想的、ぐにゃりと曲がった台、箱、こちらを見ている人。
柔らかそうに見えてそうではなく、頑丈であるべきものほど柔らかい。矛盾とは違う、相反する性質。
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というわけで、全部見た。統一感というよりは適材適所、それぞれでできる最良の方法で最良の展示。面白かった。こういうのは美術館じゃできないよなあ。たくさん栄養摂取したみたいな1日だった。
*1:と言っても親御さんはまだここにお住まいだそうで、これ、落ち着かないだろうなあというかなんというか