習作
放課後 誰もいない教室の開け放した窓から風が 味気ないベージュのカーテンを揺らして 僕はここにいるよ と 言っているようで 帰ろうと思うんだけど まだここにいてほしいような そんな素振りを見せている 整理しきれていない机とか あれだけ先生に言われて…
なんだかんだ言っても自分の国がどうなるのか騒いでんのは本当に 一部で大抵の人は今日と明日の生活と増える負担と自分のことだけ 気にしてて他の人がどうなっても別にどーだっていいんでしょって 言いたいくらいで「かわいそう」「かわいそう」「かわいそう…
地球から遠く離れたここで僕は一人になってしまった。 片道切符で来た四人いた仲間たちはみんな星になった。 いつ来るかわからない移民のために僕は一人で機械を直し、 コロニーをつくり、植物を植え、大地を走る。 川のないところに水を通し、日陰のないと…
免許を取って初めて君をドライブに誘った まだ運転は慣れてないから 大きい道をまっすぐ行くようなところだけ 大学から20分も走れば海に出る 等間隔に並ぶ灯がオレンジ色にまぶしい こわくない ? なにが 運転 お母さんの運転のほうがよっぽど怖いよ そうい…
同じクラスの友だちが虫垂炎で入院したと先生が話していたのを 母親と夕飯の買い物にいった帰りに思い出して 一人彼を見舞うことにした 週末の薄暗い病院の廊下は子どもが一人で来るようなところではない エレベーターに閉じこめられたらどうしよう こんなと…
グラスの中いっぱいの氷に炭酸の泡が集まっては離れて、ついては消えて。 いつまでも見ていたい気分。 「おいしくなくなるよ」 わかってるけどさ。からりと崩れる音はTVで聞くほどキレイじゃない。 人差し指でぐるり回してまだ泡が出るのを確認して一気飲み。…
おっさん、オレが制服着なくなったら相手にもしなくなるんだろ。 最近面倒くさそうに話すときあるもんな。 (そんなことねぇよ) あるよ。飽きてるっしょ。オレのこと。 シャワーのあと、怠い気分でボタンを留めながらなんとなくそう思ってなんも考えずに言葉…
僕は君が好きだったし、君は僕が好きだった。 二人の間にこんなにシンプルな事実があっても、ときどき会って近況を教えあっていても、それでもどうにもならなかった。 「実は両思いだったんだよね」と君。 「うまくいかないもんだよね」と僕。 笑っていいの…
声をかけようとして見えた先に君と知らない男のつながった手があった。 思わず出た声に君が気づき慌てたように離れる。その意味がまだ把握できなくて固まったままの僕に向かって君がなにか言っているのだけはわかる。ただその言葉の意味がわからない。 僕の…
だらだらと続く坂を自転車に引きずられるように降りていく 退屈な毎日はまだしばらく続く 「テンション低いじゃん」 肩をはたいて追い越していく君は いつも笑っているようで バスを待つほんの一瞬 曇らせる顔を見たのは きっと僕だけだと思う (思い上がりな…
放課後。人の少ない教室。全開にした窓からはのんびりとした部活の声。笑っている君のそばに、気づかれないようにそっと近づく。バレたらたぶん逃げられてしまう、なにかのゲームのような感じで、僕は自分の机までいって帰る支度をするふりをして君の話を聞…
死んでしまったぼくから脱皮したぼくはまるで出来の悪いホラー映画のような歩きかたで外に出る。誰も気づかない。死んでしまったからだ。嘘だ。はじめから誰にもこの存在は知られていない。必要のない人間。だから死んだのだ。ゆらゆらと歩く真っ暗だったは…
すべては夢のまま、またいつかここに戻ってくる あの時なにが起こったのか 自分が何をして誰とどんなことを話していたのか すべては曖昧なまま 不安定な時間がぐるりとすぎてゆき せまっ苦しい空間にいたはずが 気がつくとがらんどうの広場の中にひとり残さ…
写真を撮るときは二人 いつも手をつないで 男の子なのにって笑われる けど そうしないと 君がどこかに行ってしまいそうで 他のなにより君を なくすことが嫌だった僕は 大きくなってもやめたりしなかった 他の誰かが君を 君がここにいたことを 忘れてしまった…
ああ、もう。男子ってなんだかわかんない。 さっきまでムスッとしてたかと思ったらアイスモナカを口に入れ満面の笑み。 かと思ったらなんとかっていうエッチなものの話で盛り上がってる。 くるくる変わる表情をみてひとりで歯がみしてる自分がなんだかバカみ…
制服を着て 自転車に乗って通学して 窓際の席に座り 適当に授業を受けて 誰と話すでもなく なにかというとからかわれ 反論することも馬鹿馬鹿しく たまに様子を見に来る(と称して自分の非を正当化したい) 教師には何をいまさらという顔で なれてますからと突…
電車に揺られて二人 長いシート貸し切りみたいに 君の頭が僕の肩に来て 笑ってるのかと思ったらそうでもなくて いつか冗談で話したみたいに 今日はきっと僕たちの最後の日 他に好きな人ができたんだってね 前から知ってた? さっき初めて知ったっていえばいい…
いまなら一人でいても平気だよ 君がここからいなくなっても大丈夫だよ 理由なんてわからない だけど 泣かない自信だけはある いつか君が僕のことを忘れて ふたたび会ったときに僕を見て 初めて会ったみたいな顔をしたとしても 悲しい顔はしない 笑ってうつむ…
なんか今日はずっと一緒にいるのにひとことも話さないで いつものコースでレコード屋と本屋とゲームセンターと 最近できたコーヒーショップで二人並んで 渋滞の車を観察しながら 座ってずっと熱いラテ手に持ったまま 店員さんが不思議そうに試飲のコーヒー持…
右手にクマのぬいぐるみ 左手にはカッターナイフ 何に使うでもなく握りしめて 寝る前の儀式みたいに ベッドに潜りこんで顔をぎゅっと押しつけて なるべく息はしないように いっそのこと死ねたらいいのに 僕なんか 死ねばいいのに 誰かここに来て 僕のこと こ…
僕は動けない。もうずっとベッドの上にうつぶせになったままでいる。 握りしめたカッターは手のひらからすべり落ちていった。 床が汚れるな。痛いのって我慢しすぎるとよくわからなくなるんだろうか。 部屋の中が暗いのか、何も見えていないのか。 目を瞑っ…
男の子は白 女の子は赤 人知れず流す涙 一人慰める夜 男の子は白 女の子は赤 人目忍ぶ逢瀬 許されぬ恋 君と僕の 水分混ぜる 叶わぬ輪廻 繰り返す転生 嘘だ そんなの 嘘だ 嘘だ 嘘だ う そ だ 男の子は白 女の子は赤 するり擦れ合う皮膚 ゆるり埋まりゆく指 …